Persona3小説 20. 夜の女王 -BAD ENDING- ★◇◆(シャドウ・綾時×主人公) 忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

20. 夜の女王 -BAD ENDING- ★◇◆(シャドウ・綾時×主人公)


復活の力を秘めし体

我が子らに捧げよ


突然、頭の中で意識を引き裂く声が無尽に響いた。
ふらつき、目眩をこらえようと立ち止まった。するとぼやけた視界に広がる光の海にさざ波のような変化が起きた。ブヨブヨと動き始める。
胎動のように蠢く闇の卵。シャドウを産み出す時より何倍もオゾましい。無意識に脚が後ろへさがった。
殻の下に溜まる赤黒い液体が、雫と呼ぶには巨大すぎるほど膨れ、音を立てて落下している。
「な・・・んだ、あれ、」
凍りついてそのありさまを見詰める俺の前で、それは黒い鍾乳石のように上方へと成長し、歪み、膝を抱えた胎児の様な人型の輪郭をとり始めた。
やがて丸まっていたそいつが、隠されていた顔をゆっくりと上げてこちらを見つめた時、俺は我が目を疑った。
背筋が狂ったように震え、神経がささくれだつ。
そいつの青灰色の眼は、瞳孔が縦に裂けていた。

「う・・・ アキラ・・・」

「!?
・・・綾時・・・?」

眼の前に顕れた者は、彼の声で俺の名を呼んだ。
不気味な貌の半分を血で汚し、黒い外衣に身を包み、胸を錆付いた鎖に縛られ鮮血を滲ませた姿。両手から伸びる鋭く長い爪。
ただし、半分溶けかかった・・・

(これが・・・綾時?)

「・・・りょ、」

「来るな・・・」

チャリチャリと鎖の音を鳴らしながら這っている傍へと近寄ろうとした。しかし彼は素早く片腕を振り上げ、俺に黒い爪を突きつけた。反射的に全身が危険に反応して、足が勝手に間合いをとる。
その鋭い拒絶の意思にうなじに冷や汗が湧いた。
彼は気を落としたように地面に呟いた。

「・・・無防備に過ぎる・・・。なぜ、僕の言う事をきかなかった」
「綾時がいるのに、封印なんかできるわけないだろ!?」

言い募った俺に、刈り取る者は傲然と顔をあげ、ギラつく視線を向けた。

「シャドウは、君に餓える・・・
かつて、ヒルコのような不完全さで世に放り出された僕を宿し、
12のシャドウを引き込んで、僕と交じり合せる器になった・・・。
その君の血肉や体液が秘める、復活の力の味は、奴らにとって格別だというのに。
完全にシャドウとして孵ってしまった今、僕だって、本能には逆らえない・・・」

ゼイゼイと苦しそうな声で語られ、理解するより先に身体に緊張が走っていた。

(餓える? 味・・・?)
やっと、その宣告がもたらす意味に至って、俺の脚が哂いだした。

「・・・お 俺・・・は、綾時を、連れ戻しに 」
変貌した綾時は、俺に突きつけていた腕を降ろした。

「・・・早く斬れよ。 完全に僕から心が失せる前に。
こうなるかもしれないと思って、・・・それを渡したんだ」

怖ろしい外見にそぐわない、沈みこんだ口調だった。

俺は何も言えずに立ち尽くした。
恐怖なのか絶望のせいなのか分からない。
目から涙がこぼれた。悲しいのかもしれない。
わからない・・・。胸の内は真っ暗だ。

何故、こんな残酷を彼に強いるんだ。
何故ここまで、彼は、奪われ続けなくてはならない?

滅びを望む人間の都合で呼びだされ、
誕生を分断され、
俺の中に閉じ込められ、
勝手に与えられた人としての生さえも、定めに奪われ、
俺のせいで神として終わることもできず・・・
・・・一匹の無残なシャドウに堕された。
叫びだしたい。運命の全てを呪っても足りない。

「喰いたければ、そうして。 綾時の好きなように・・・」

「君を、」 彼がこちらを窺う。―――― 「喰ってもいいだって?」

「綾時、」
恐怖に惹かれるとはこんな感じだろうか。ふらりと一歩、足が出る。
覚悟なんか無意味だ。
自分が綾時に食べられる所を想像したら、きっと俺は怯えてしまう苦痛の事を考えたなら、きっと本心で話せない。
だから、なにも想像せずに心の赴くまま。

「そんな覚悟があるなら、僕をその剣で倒すくらい、訳ないだろう?」
「もう、お前からなにも奪いたくないよ、俺・・・」
「奪う? 君から何もかも奪ったのは、僕の方だ。 ・・・そうじゃないか」

魔獣の様な眼をもつ綾時の、表情の無い殺伐とした姿。
彼を彩るものは、頭から胸から滴り落ちている血のような色の液体だけだ。
その冷酷に刻まれた傷はニュクスの罰の続きだろう。
シャドウの綾時は痛みに苦しめられている。でなかったら、罰の意味が無い。

俺に力があれば・・・。
デスの時のように、せめてまた、封じてやれたら。

「早くしろ・・・。こうしてる間にも、滅びは進む。
僕を殺して、イゴールから授けられた力を使え」

「イゴール?」 そうか。ベルベットルームに俺を結びつけたのは、ファルロス・・・彼だった。「知ってるのか・・・なにもかも」

「知っていたんじゃない。
・・・そう仕向けたのさ。最初から。
君が僕をペルソナにしたら、こうなるように・・・
だから、そんなに哀れむ必要なんかないんだよ。
僕は君を散々利用したんだ。 定めの上でも、自分の意思でもだ」

(利用・・・。)

そんな事は分かっていた。
試練とは要するに、デスが宣告者として復活するために、バラバラになった自分の欠片の12のシャドウを集めさせ、俺の中で融合していった事だ。
でも、ファルロスは記憶を無くして無自覚だった。
シャドウとしての成長、その本能に従っていただけだ。
どうしてそれを責められるだろう。

「利用するならしてくれ、」
なぜかそれを言うとき顔の片側が歪み、笑みは辛いものになった。「最後まで」

彼は、俺が近づくのを今度は止めなかった。
相手の背後でニュクスの本体が一際輝いた。逆光となり、彼の表情が見えなくなる。

「こんな命令にも抗えない・・・。
僕は・・・」
彼は、俺から眼を背けて何かを呟いた。「君が、憎い」

俺がここで死ねば、たぶん世界は滅びるだろう。でも綾時一人を地獄に落とし、なにが世界の救済だろう。

(喰われるのってやっぱり痛いのかな・・・ そりゃ痛いか・・・)

出っ放しでボーっと前を見てるメサイアに帰還命令を出した。なのに、幾ら引っ込めようとしても、還ってくれない。
(何でだ?? 仕方ないな・・・。絶対、俺を助けるなよ。わかったな?) 

言い聞かせておいて、なぜか苦い顔をしている綾時に向き直った。

「どうすればいい? 目は閉じてようか?」

「・・・・・・脱いでくれ。 服は邪魔だ」

喰うのに邪魔といわれ、思い切って俺はブレザーを脱ぎ、タイを外した。
そこまで来てから、ハタと迷った。どこまで脱げばいいんだろう? こんな時にそんな場合じゃないが、周りはスライム型ヒト型、さまざまのシャドウがうようよ人垣作ってるし、全部はちょっと恥ずかしい、いくらなんでも。

「・・・う、上だけでいい? 」
「全部だ。 ・・・裸になるんだ 」

いま顔が紅くなってしまった気がする。なんでこんな時に。
俺は綾時に顔を見られないようにうつむいた。急いでシャツのボタンを外して下を脱いだ。全部と言われたから、一応靴と靴下も。

寒いので最後にまわしたシャツだけになった。続けて脱ごうとした時、さすがに手が、これから味わうだろう惨殺の予感に震えだした。

「あ・・・あの、せめて、最初に殺して。食べるのはその後で」
「死ねば身体は力を失う。 君を啜って残り滓になったら、奴らに・・・くれてやるよ」

彼の顔には、狂気の翳が降り始めていた。取り囲むシャドウの群れを眺めるその唇が、薄く嗤っている。その酷薄な表情に俺は絶句した。

「僕に体を与えるつもりなら、黙って言いなりになればいい」
「・・・分かっ・・・た・・・」

破裂しそうな動悸を無理やり押し込め、片肌を脱いだとき、もの凄い勢いで綾時が接近し、俺を殴った。

「―――ぁうッ!!」

地面に激しく転がる。強打した胸の痛みに息を詰まらせている隙に腕をとられ、引きずられ、シャツを下敷きに仰向けにされた。

「ッく・・・痛・・・ こんなこと・・・しなくたって・・・」
大人しく言うこときいてるのに! 応えもなく、冷たく硬い地面に組み敷かれたまま、綾時が血みどろの顔を首に近づけてきた。(・・・いよいよか・・・)
こらえきれない恐怖が身体を暴れさせようとするのを、無理やり諦めで押さえ込み、彼が齧りやすいように頭を傾けた。首筋を差し出し、ぎゅっと眼をつぶった。

「   ・・・ッぅ、」
冷たい・・・。唇が戯れるように肌を嬲った。
すぐに潤みの無い乾いた猫のような舌が、最適な血管を求めるように、脈の上をざらざらと探り始めた。刺すように怖ろしい、ゾッとする悪寒と僅かな快感が、這われている側の半身を痺れさせる。
(! ・・・舌・・・気持ち、ワル・・・)
いつまで続くんだ...その瞬間は。いつ来るんだよ。
歯噛みをして震えに耐えた。
魔の跳梁する空間に、懸命に押し殺しても喘ぎが漏れた。
俺は、首を竦めたいのを我慢するのに、必死だった。
冷気が地面を這い、かぶさっている綾時しか覆うものの無い下半身に纏わりついて、とても...寒い。
舌が...唇が擦りながらおとがいに移り、くぼみを穿つように押し付けられる。
味わうように舐めたかと思うと耳を食まれ、貪欲に吸いつかれた。「ぅッ・・・・・・」 
声が出てしまい芯に最初の衝撃が灼きつくように走る。
(!?)
俺は、綾時が何をしたいのか分からなくなってきた。

「ニュクスが君の苦しみをお望みだ。
きみが彼女を満足させられたら・・・そのあいだ、滅びは止まるよ」

疑問を読んだかのように、物憂い吐息が耳に囁く。
(苦しみ? ) 意味が呑み込めず、問いかけようとした時、綾時が耳朶を唇に挟み、鋭い歯を立てた。

「――――――イッ たぁぁああああッ!!」
肉の引き千切れる嫌な音がし、めらめらと熱い炎に似た痛みが顔半分を襲った。血が溢れて首を伝い落ちる。手で耳を覆いたい、どうなっているのか怖ろしい。
なのに彼は、俺の両腕を地面に押さえつけたまま、血塗れの唇から顎に赤い筋を伝わせ、ゆっくりを身体を起こした。

「うぁっ いッ痛た・・・あぁッ!」
涙が、言い表せない痛さと奪われた自由の代わりに、溢れ出した。

耳たぶ、噛み千切られた―――
次に何をされるのか恐くなり、眼が泳いで勝手に綾時を見てしまう。
彼は顎を引いて、俺に、舌の先にのった血だらけの肉片を見せ、眼を細めて恍惚と転がしていた。
飽きるまで咥内で咀嚼し、ようやくそれを、旨そうに呑み込んだ...
「うっ・・・ぐ・・・。うぅ・・・」
痛みに悶えながらも、見せ付けられた彼の哄笑する光景に竦みあがった。
もはや俺の事を餌としか思っていない。そんな餓えた眼に見下ろされる。

「歯に可愛くって、美味しくて・・・ノドが潤う血、だな。 思ったとおりだ」

小さく舌なめずりをしながら、再び覆いかぶさってくる。
その時、メサイアが俺に仄かに光る指を振り下ろした。
温かい気が耳を包んだ瞬間、流れ落ちていた血が止まるのを感じ、ズキズキとした疼痛が引いていった。
(余計な事してないで、還れ。)
命令にも関わらず、ペルソナは顔をあげて再び動かなくなった。
こんな事を繰り返されては、生殺しじゃないか!

首を咽喉を軽く噛まれ、皮膚を挟んでは強く吸われた。
唇が離れるたび、欝血した皮膚の上に、焦げるような印が出来ていくのが分かる。
いつ咽喉笛を食いちぎられるかと全身に力を込めてその時を待つ俺を、綾時はただ一時の食前の愉しみのように愛で続けた。
「は...あぁ、・・・りょ、綾時・・・、喰うなら一思いに・・・あぅッ
・・・頼む、から、これ、じゃ・・・!」

「同じ事を僕が願った時に、自分がどうしたか・・・思い出しなよ」

(・・・そんな事いったってこれじゃ、タっちゃう! ・・・っていうかタった!)

死ぬって時に冗談じゃない、と懸命に突っ張った俺の脚の間に、彼の脚がねじ込まれた。

(!?) その位置、姿勢で、やっと綾時の“つもり”が分かり、かっとなって俺は足掻いた。
「ヤメロそんな気分じゃないっ! やめろったらッ!!」
「いつも最初だけだったね、君の抵抗は。 ・・・すぐに自分から欲しがるようになる」
「・・・俺がいつ自分から欲しがった。
いつだってそうなるように仕向けた癖に、」

「仕向ける? ふふ、・・・なら聞いてくれるかな。
僕の居た場所は誰も受け入れる事のなかったきみの奥深くにあった。あの女神、
世界卵(ニュクス)のように、いずれ死を産むのため君はずっと厚い殻で僕を護っていたんだよ。大事にだいじに、・・・自分を守るようにね」

突然、両腕が自由になった。

「殻でしかない君が送ってきたのは、人生とも呼べない生活さ・・・。
そんな状態を強いられていた人間に僕は、進むか退くかを自身で選ばせた。
君がFOOLに目覚めたのは、当然の成り行きだろう・・・。
何も知らずに僕を守っていた無意識、何も確かめずに署名をした意識。
どちらも君を破滅に導く、・・・愚かな心だったんだから」

「知らずにやったことでも、俺はお前のこと・・・」

「愛した・・・それとも“信じた”。 そう言いたいの?
僕たちの始まりに、そんなものがあったと思うのかい。
君は僕に強姦され、僕は君を強姦させられた。二人とも・・・ただの運命に強いられたのさ。
いまさら偽る必要は無いよ。
僕はいつも、君の本当の心だけを啜ってきた。本当のきみは、誰かと繋がりたくて愛されたくてそればかりを願っていた。・・・そうだろ?」

返す言葉が咽喉に詰まり、引き剥がそうと彼の髪を掴んだ。すると指先がありえないほど割れたびしょ濡れの頭皮に触れた。深い。中までグチャグチャになってそうな傷だ。
それ以上触れるのもためらわれて指を離す。

「・・・じゃ、始めようか。 君の苦しみを母なる者に見せてやってくれ」

血だらけで綾時の表情が分からない。一体、何を考えている。

脚を攫われ、掴まれそうになるのを、思い切り蹴飛ばして、地面を掻いて立ち上がろうと膝をついた。
転がっている剣に向かって跳躍する刹那、一瞬速かった綾時の腕に、背後から腰を捕われた。
「逃げても無駄だ。お仕置きを受けてもらわないと」
「くっそ・・・ナメやがって、」
「ニュクスは決して僕らを許さない。 ・・・そう言ったはずだよ」
強引に体を光の方に向かされた。卵はギラギラと光って眼球を刺した。既に半裸になっている自分の何も隠せないまま、猛禽のように長い爪を生やした綾時の手が、跪く俺の左膝を掴み、ニュクスとシャドウの観客共に向けて開こうと―――

「あっ・・・い、いやだ! ―――――こんなぁッ」

人外とはいえ、シャドウには顔もあれば眼もあるのに。
無数の、殺気以外の何かをたたえた眼に貫かれ、燃え上がるような羞恥を感じ、肌に血が騰いた。
前かがみになって左手で隠し、右手は後ろの綾時を押しのけるため振り回した。

「逆らうつもりなら、・・・縛ってしまおうかな」
チャリチャリと金属の擦れる音がした、と思う間に一本の血錆の浮いた鎖が視界に飛び込み、俺の胸に腕ごと巻きつき縛りあげた。「――――うぁッ」
両腕が抜けそうな力で引っ張られ、鎖のつくる環の中で窮屈に後ろに回された。ギザつく表面に胸の皮膚を破られ、緊縛に乳首が押し出され、そこは血流の滞りにみるまに色が変わっていった。
「く、苦し・・・ ハァ・・・ぁ、」
肩を上げたり肘を突っ張っても、まるで緩まない。
息を吐けば減った体積の分だけ追い討ちをかけるように締め付けられる。
全身が息苦しさに、ぶるぶる震えだした。

綾時の手が、鎖に巻き込まれたシャツを両側に開き、ニュクスの光を当てられ何もかも見えるようにしてしまった。
さっきの彼の舌の愛撫や恥辱にさえ、俺は反応していた。
それがつぶさに観られ、言いようの無い奮えに体が炙られる。

(だからどうして、こんな目に合ってるのに!)

悔しくて、無性にやるせなくなって、眼がこわれたみたいに熱くなった。

「シャドウ相手にも欲情するのかい? さすが僕を育てた体だね・・・」

笑みの混じった言葉責めに咄嗟の反駁も出来ないまま、顎をつかまれ仰け反らされた。背後から覗きこんだ綾時が、息苦しさに開いていた口を襲い、ざらついた猫の舌を押し込み、呼吸を阻んだ。
絡めた舌の根まで貪られ、湧き出した潤みを全て啜られる。
痛みすら感じるようなその欲深い動きに、背が揺れ、足の間まで疼いた。
これ以上身体が応えるのは嫌だ。
シャドウ共に全部、見られているのに。
脚を擦り合わせ、隠そうと懸命になった。
「ン・・・ ・・・んんっ」
「感じてる・・・、僕のキスに」
今までとは違う、甘だるい不思議な吐息。跳ね回る舌に蹂躙され、指でノドを愛撫されるうち、朦朧とした意識が目蓋の裏に悪夢のような幻覚を見せ始めた。
人間の精神を蝕むシャドウ・・・・・・綾時の毒の口付けは、メサイアが居なければ確実に狂ってしまいそうなほど、濃厚にゆるゆると精神の殻を締め上げる。
「うッ ・・・フゥ・・・ っん」
「そんなに自分でコスって・・・辛そう。 ・・・助けてあげようか」
喉奥に吐かれた言葉に、わずか意識が戻された。
腿の間に隠していたものをいきなり握られ、手の反発の感触で、いつのまにか硬く屹立していたのを気づかされた。
見開いた眼に、綾時の血に汚れた咽喉元が映った。
彼は唇を深く合わせながら手を更に伸ばし、本格的に俺を嬲り始めた。

(う、あぁ、ああっ! あッ ・・・あ!)
いつしか漏らしていた先走りを親指にすくわれ、カリに塗り広げられたとき、そこから胸に熱が噴いた。
強烈な射精感に襲われ綾時の唇の間で爆発した自分の喘ぎが、息が絶えそうなくらい強く塞がれる。
行き場のなくなった衝動にガクガクと体が揺れる。
「アあッ! ・・・あっ や、厭だっ アウッ」
精巣を守る場所に爪が這って破かれそうな程つねられた時、痛みと快感の両極の中、何も止められらくなっ何度かの勢いに分けて、すごい勢いで迸らせてしまっていた。

「っ・・・ぁ、あ、は、・・・ァ」

「・・・びっくりした。

ほら、見てごらん。 さっき一度出したとは思えない量だ。
君って淫らにも程があるよ。
フフ・・・お楽しみはここまで。今度は僕の番だね」

ぼうぜんと地面を見つめていた。すると肩が掴まれ、強い力で後ろに引っぱられた。
「っ・・・!」
崩れかかったとたん腰の後ろに感じた、異様な摩擦。(綾時の、・・・) 情けない悲鳴はあげたくない。口をきつく噛み締める。
でもそんな抵抗は無駄じゃないか...それほど酷い、凶器の感触だ。
両膝の裏が腕に掬われた。子供のように体を持ち上げられ、焦りがこみ上げる。「も、ぁ、放しっ・・・」 口を開いたその瞬間、押しつけられた。
「・・・ぐぅッ、・・・ぅうッ!」
「僕のが、君の・・・このお腹を裂いてあげられるホドだったら・・・
たったこれっぽっちで、残念だよ」
唇がうなじを這っている。
大きい。鉄みたいに硬い。破れそう。
きしんだ音を立てて綾時の侵入を許していく自分が信じられなかった。背骨に沿った腱が裂けて切れてしまいそうなほど苦しいのに。先が見えない恐怖から遠ざかりたい。
「――ぎゃああ! ・・・ぁあ゛ッ」
これまでのは遠慮してたと言わんばかりの無慈悲さで、弾力を微塵も感じないモノが括約筋の抵抗を無下にあしらっていく。怯えて固く閉じているのに、ソコは叩きつける圧倒的な衝撃に耐えきれず綾時を呑み込んでいった。
「はっう、・・・あ・・・あぁ、・・・あッ!・・・」
「最初に破ったときに比べたら、ここ・・・ずいぶん拡がったね。・・・」 
苦しいのに狂いそうな快感の圧迫。背骨を伝い全体へと流れ、中心の奥の奥をえぐりながら伸びてくる。体の中をずぶずぶ突き進む振動、口から臓物を吐き出しそう。
「・・・はぁあッ ハア、 ひイい゛ッ ・・・りょ、じ、イタいよ痛ぃ――あぁああッ!」
死にそう。光も影も薄れて。目から溢れた何か、幾筋も伝い落ちていく。
周囲でざわざわと蠢く気配。醜いシャドウの群れが輪を狭めていく不気味な音。
(あ・・・ぁ、)
赤紫の大きな舌。自分が放った精液が零れた地面を舐めまわしてる。夢中で舐め回してる・・・。
もう何も考えられない。揺さぶられるたびに呆けた目だけはその光景の上でふらついた。(・・・ズッ ・・・ズズッ)体内を隙間なく擦っている杭。俺を殺したいみたいに突き刺してる。死ぬ寸前に引き抜かれていく。延々と繰り返され衰えない。激しくて・・・逃れたいと思う力も尽きていく。(もうだめ・・・)脱力して腰が落ちた瞬間、突き破られるほど強く腹側の弱いトコロをえぐられた。
「ァウッ!」
激しい尿意にも似た、それ以上に重く痺れ来る感覚が下腹部を襲った。
悪寒さえ、脳から消し飛ぶほどの快感。
「―――ぐぅう゛っ!・・・」
「ははッ・・・ しょっぱなから、追い立ててくれるね彰・・・。
きみの感触・・・欲深に握り締めて僕を美味しそうに舌なめずりしてる・・・。こんなにも、離さない、」
「たすけ・・・ッ! ・・・こわいッ!!―――あぁあッ!」
綾時は怒ったみたいに激しく叩きつけた。腹の中を殴ってる彼の物が性器の裏側の肉をねじ込むように擦りあげた。
揺さぶられて何かが腹をびたびた打つ。
それが猛った自分だと分かって怖ろしい。
「こ・・・こわいっ ・・・―――こわいよッ!」
もう尻の穴も腹もぐずぐずに融けてるみたいだ。壊れてる処から勝手に侵入してる綾時に痙攣で縋りついてる俺の中身。びくびく扱いてしまうたびにりょうじがおおきく、おおきくなってる。大き過ぎて怖い。
頭の後ろでじゃりじゃり髪を噛んでいた口が荒い吐息をはいた。
「フフッ ・・・いっつも澄ました顔の裏で、ホントの君は・・・スキでスキで堪らないんだろ・・・? こうされるの」
どうしてかは分からない。けどそれを聞いた俺の目から堰をきった涙が溢れた。
「―――あッ! ―――あぁッ!!」
何も思いどおりにならないカラダ。自分にこんなことをしてる
狂気(モノ)
を握りしめたがる肉。
「ひっ・・・」
俺を奴等に突き出すようにした腕が大きく動き、更に肢を開いた。
両膝に綾時の爪がキツく食い込む。からだ中が痛い。肺だけが必死で息を続けようともがく。揺るぎなく締め付ける鎖が『もう諦めろ』と誘惑する...
「ふふ・・・フフ。 どうして暴れるのさ・・・ぼくが気持ちよくなっちゃうのに。
シャドウの残虐が欲しくて体がよがってもしかたがないよ。
・・・きみのカラダは、10年も隅々まで僕に根を張られ、愛されていた生き餌だ。失ったモノをもう一度取り戻したがってすがりついてる・・・ ・・・それだけさ、・・・」
「うぁッ!!やめてぇッ綾時やめてッ!!おねがイィッ!!もうやだあッ!!」
「・・・無理しなくていいのに。
カラダの言いなりに叫んでごらんよ・・・。
もっともっと、グチャグチャになるまでしてって、...すすり泣いて可哀そうだ...君の血」
(あ・・・ぁ、あ。) 踏み入れたくない黒い穴。真っ暗な快感の沼が体の中心でうねる。口を開けて誘いこむように。イけば絶対に狂って壊れると思うのに、ただ一つの解放めがけて疾走していく・・・どうすることもできない。
気持ち悪い影の顔。肢の間で揺れ動く真っ黒な目、目、目。
腿を押し広げて体を押し込んだ2匹がそれぞれに違う醜く分厚い唇を開けた。臨界に震える俺の先に斑の浮いた舌を伸ばした。
「は・・・ゥ、・・・」
腐汁を滴らせた鮫のような口が開かれ、吐きそうな臭いが鼻をついた。
深々と綾時を呑みこんでる股間、よじっても暴れても逃れられない。
信じられない。自分に起こってること。まだ信じることが出来ない。
「うっ・・・ウッ、も、許してッ ・・・こんなの、できなぁッ! ・・・」
「ふふ・・・すっごいビクビクしてる、君の内臓・・・。これだよ、誰よりも最高なの・・・」
汁塗れのやすりのような舌が性器にびちゃりと巻きついて体が撥ねた。
「―――あ゛うッ」
じゅるじゅると幹に沿って絡みつき、表皮を引っかけネジりあげ鈴口に細かい突起をこすりつけるキモチワルイ無数の舌。締め付けて緩めては絞るように射精を誘う怖ろしい動き。
「あ、ああ゛っ あくっ クる・・・来ちゃ・・・ぁ」
隠したい全てを突き出され、こんな恰好で揺さぶられながらシャドウのなかに・・・?
「・・・いやだイクッあッ、クッ出るなッでないでッッ!!」
「ほら、ちゃんと眼、開けて見たらいいのに・・・
汚らしい化け物に恥もなく勃てた君がフェラされてるの・・・フフ。
・・・そこに出すねきっと君はッ、・・・大喜びで濃いヤツいっぱい・・・ あハハハハッ・・・」
キチガイじみた嗤い声が耳を胸をバラバラに壊していく。
突き刺さったものが自分の裏の隅々を滅ぼしていく。
シャドウがすする音。乳飲み子のように無心な貪欲。
カラダをつま先から額まで貫き昇った絶頂に視界が裏返った。
(みん、な・・・)
もういい。欲しいのはファルロスだけ。いま欲しいのは、たった一人の友達。そのともだちがしたいのは、おれの背骨がとけてしまうくらいいっぱいいっぱい罪を注ぐこと。こんな厭らしい体の奥をいっしょうけんめい引っ掻いてるファルロスがいじらしい。こんなおれを欲しがってて嬉しい。
(ファルロスもっとおれの心臓に刺さるくらい入ってきて。)
自分でたくさん腰を動かして体内にファルロスを沈めた。そうしたら冷たい激痛がドクドク胸で脈打った。血が噴き出すみたいなファルロスの射精。こころが真っ赤に濡れてしまう。ファルロスが体中から追い出していく。おれが大切だと思っていたもの、にんげんだった記憶の全て。

目が眩む無数の光が剣と化して輝いた。青白い炎。

「・・・おめでとう。
これできみは僕と同じだ。ほんとうに、
・・・ひとつになれたよ」

静かな声、冷たい月光のように届いた。
もう守りたいものなんかない。「・・・ふ、うっ、」 小突かれて下をみると俺の腹が綾時の形に膨らんでいた。中で注がれている何かに満ち足りた気持ちになる。皮膚が震えて裂けそうなくらいたくさん動いている、・・・愛している者の分身。

上空で女神が輝いていた。祝福されてると感じるやさしい目だ。
ずっと暗闇を支配していた女王の聖なる光。それに比べて太陽は、なんて騒々しかったことか。汚らしい、あの全てを焼き滅ぼす熱・・・。


(・・・月、綺麗だ。 とても・・・)














PR

忍者ブログ [PR]